第三編 触媒学会活動記録
元素戦略研究会
1.はじめに
触媒はバルクケミカルズからファインケミカルズ合成までの広範な製造化学産業、発電所
の排気浄化に代表される環境保全化学産業には不可欠であり、現代社会を下支えしている技
術と言って過言ではない。触媒の活性成分として白金、ロジウム、パラジウムなどの貴金属
が多く使用されており、希少元素の存在なくしては触媒化学の発展は有り得なかった。我が
国は希少元素のほとんどを輸入に頼っており、これまで希少元素の省資源化に関する研究は
多く行われてきた。一方で貴金属をクラーク数上位の鉄や銅などの汎用元素で置き換えよう
とする代替技術は立ち遅れているのが現状である。今後、地球上の限られた資源を有効に利
用し、持続的社会を構築するためには、多量に存在する汎用元素の利用による触媒の高性能
化、いわゆる触媒の元素戦略研究の進展が求められている。希少元素の省資源化および代替
化に関する研究は、これまでにも触媒討論会において多く発表されているが、元素戦略研究
という一本のジャンルはなかった。近年、触媒以外の分野においても元素戦略研究の重要性
が認識され、多くの学会で元素戦略研究の機運がすでに高まっており、各種部会やセッショ
ンなどが作られている。本研究会は、このような状況の下、触媒に使用されている貴金属・
レアアースなどの希少元素を汎用元素に置き換える元素戦略研究に興味を持つ会員相互の情
報交換の場を提供することを目的として設立され、活動を行っている。
2.今年度の活動内容と展望(敬称略)
今年度は、第119回触媒討論会討論会(ポスター発表)にセッション参加を行なった。発表 件数は10件であった。続いて、第120回触媒討論会A(愛媛大学)へのセッション参加を行っ た。口頭発表は中山 哲(北海道大学)の依頼講演、ならびにA1講演 21件、A2講演 2件の計
24件、ポスター発表は1件であった。毎年、発表件数は漸増している。また、第120回触媒討論 会ポスターセッションにも参加することになっており、現在8件のポスター発表が予定されて いる。
本研究会主催の講演者6名(堀 正雄(ユミコア日本触媒)、野村淳子(東京工業大学)、本 橋輝樹(神奈川大学)、渡部 綾(静岡大学)、佐藤智司(千葉大学)、山下晃一(東京大学))に
よる「第五回 元素戦略に基づいた触媒設計シンポジウム」が2017年12月1日首都大学東 京 秋葉原サテライトキャンパスにおいて開催され、58名の参加があった。
本研究会はその性格上対象とする分野が広いため、適宜他研究会との連携を図ってゆきた い。
3.世話人代表
田中庸裕
〒615-8510 京都市西京区京都大学桂 京都大学大学院工学研究科